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「兄ちゃん、何をしたかわかってる?」
右側の男が腹をさすりながら不快感を露にしていた。なぜ腹をさすっているのか。不快そうにいるのか。話は5分くらい巻き戻される。
◆◆◆
誰かあいつを捕まえろ、そう叫びながら髭を生やした老人が私の横を走り去った。
一体、誰に向かって言っているのか指針がうやむやな呼び掛けだった。
今思えば周囲に拡散する事だけを目的にしていたのかもしれなかった。誰それ構わなかったのかもしれない。
私はと言えば、この老人が追っている側の人間なら、逃げる側の人間は私からももう遠くへ行っているに違いないと推測し、わざわざ後ろから加勢するのも野暮な話だと判断した。
気の毒だが老人はその内に疲れて追跡を諦めるだろう。
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