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我に返ったのはそれからわずか1分後。
その1分という時間はあまりにも現実を把握するための、感情の準備を整える時間としては短すぎた。
血だらけの手に目の前に転がった誰なのかわからないぐらいに切り裂かれた肉塊とも云えるものが視界に入る。
足らしきものに見慣れたタトゥーを発見した時には視界が真っ赤に染まったのを覚えている。
そこから何をしたのかは覚えていない。
気がつけばここよりも質素な鉄格子が見えた。
ふと手元を見下ろすとまだ血で赤黒く染め上がっているように見えた。
おれの手は綺麗にいつもの状態なのにそう見えたのだ。
その日から一ヶ月後。
おれは終身刑に処された。
いま、あれから五年の月日が流れた。
おれの担当刑事 宮前海斗とは五年の間に随分と仲が良くなったものである。
暇人なのかは知らないが「面会」という形を取らず、牢屋越しに話にくる。
今日も相も変わらずに会いにきた。
しかも珍しく私服だった。
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