2/2
前へ
/18ページ
次へ
私は食材を手に入れようと遠出して渓流の岸辺に向かった。 今日はマチルダに川魚を食べさせたかったからだ。 それまで私は川に行くことは滅多になかった。 私の住まいは森なので川まで行くには往復するのに半日もかかるからだ。 それでもマチルダの喜ぶ顔を見たくて私は無理をした。 マチルダは今まで川に行ったこともなければ、魚を観たこともないそうだ。 きっと新鮮で活きが良い魚を食べれば大喜びするに違いなかった。 私も魚は大好物なのだが川は遠いし魚を獲るには危険を伴う。 私は泳ぎも苦にならないし浅瀬でしか魚を追わない。 だが油断は禁物だ。 今まで渓流に呑まれて多くの仲間が行方知らずになっている。 けっして川で無理をしてはならない。 川岸に着くと私は周囲を眺めながら散策した。 流れが緩やかな浅瀬を見つける。 水面下では大小の魚影が波間に群れをなして躍っていた。 さっそく魚を獲る準備に取り掛かる。 小さな魚の群れが浅瀬を凄い速度で泳いでいる。 捕まえようとすると、すばしこくて直ぐ逃げられてしまう。 なかなか上手く獲れるものではない。 やはり、動きの鈍い大魚を狙った方が良さそうだ。 いつも魚獲る時は大魚がワナに掛かるまで、私は何時間でも待ち続けるのだが… しかし回復しかかっているとはいえ、長時間マチルダを独りにしておけない。 私が傍にいないと彼女は不良男子の餌食になってしまう。 今日のところは大物狙いを諦めざるを得ない。 大事なのはスピードだ。 そこそこの魚で妥協して用は済ませ、とっとと帰らなくては! しかし焦ると全然上手くいかない。 時間は無駄に過ぎるばかりで収穫なし、困った。 私としたことが、魚獲りぐらいで悪戦苦闘するなんてあり得ない。 さらに時間は過ぎていく。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加