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奴
月明かりに照され、私の周囲は微かに明るく水中でも周囲を見渡すことができる。
川の流れは澱み静寂が支配する…月光が薄暗い川底を揺らめきながら照らす。
淡い光影は闇の深さ、暗黒と恐怖を助長させるばかりだ。
落ち着きを取り戻し眠けがしてきた。
生への執着を消失した私は思う。
『もういい..もういいや..どうでもいい..このまま楽に死ねればいい..』
緩やかな川の流れが心地良い。
河岸の岩に腕を引っ掻けたまま小波に身を委ねる私。
身体が軽くなり全身が川面に浮き始めた。
そのまま沈黙の世界に吸い込まれ意識が遠ざかっていく…
私は水面に顔を着けたまま漣の中を静かに揺らいでいた。
穏やかな死の安らぎを歓迎する…単に自然に回帰する工程にすぎないのだから。
恐れることはない、今の私は死を何の苦悩なく受け入れられる。
安堵した私はウトウトしながら、何気に水面下の川底に目を遣っていた。
薄ら明かりに棚引く水底には無数の石が敷き詰められていて蒼白く厳かな光沢を放っている。
それは夜空に瞬き輝く星の様に美しい。
そんな厳粛な情景に魅せられ耽溺する私…
…だが…
突如、蒼く映える川底を黒い影が過(ヨギ)る!?
それを観るや私は激しく動揺した。
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