ブラックスネーク

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「着きました。」 一言も話さずに運転をしていた運転手の低い声が車内に響いたと同時に車が停まった。 「それじゃあ、下りようか?お姫様。」 男の人は運転手が開けたドアから降り、私側のドアを開け手を差し出して来た。 「私は車椅子がないと移動出来ません。」 「ああ!!そうだったね?また忘れる所だったよ。」 男の人は私に向かって差し出していた手を引き、勢いよく両腕を伸ばして私の身体を抱き上げた。 「っ、や、止めて!!私に触らないで!!」 翔君以外の人に触れられるなんて嫌!! 身体が震える。 気分が悪い。 凄く怖い。 翔君、助けて!! 「はは、俺が怖い?震えちゃって可愛いね。」 「っ、止めて!!離して!!」 「それは出来ないな。何のために車椅子を置いて来たと思ってるの?君が皆木以外に触れられたくないなんて言うから、どうしても触れたくなったんだ。君のせいだよ?」 私に触れたいから『エンジェル』をあの場所に置いて来たの? 歩けない私には絶対必要な物だと分かっていながら、自分の心を満足させるために私と『エンジェル』を引き離したの? 本当に可哀相な人。 自分の事しか考えられない自己中心的で冷たい人。
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