210人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちっ、誰も居ねぇじゃねぇか。」
「先生もお昼休みじゃないですか?」
「体調が悪ぃ生徒が居るのに昼休みなんて呑気なもんだな。」
「私なら大丈夫ですから余り心配しないで下さい。」
「はあ、とりあえずベッドに寝かせるから俺に掴まれ。」
「はい。」
翔君は保健室に先生が居なかった事が気に入らなかったのか、不機嫌な表情のまま私を抱き上げてベッドに寝かせると、保健室にある戸棚を開け始めた。
「ちっ、何が効くのか分からねぇ。」
「翔君、どうしたんですか?」
「杏樹の症状に効く薬を探してる。」
「放課後まで寝ていれば大丈夫ですから、翔君は皆の所に戻ってお弁当を食べて下さい。」
「駄目だ。杏樹の体調を治すのが先だ。弁当は後で食うから心配すんな。」
「はい、分かりました。」
私が何を言っても翔君には聞き入れてもらえない。
約束の13時まで後少し。
「はあ、人呼んで来るから少し待ってろ。」
「はい。」
「一人で大丈夫か?怖くねぇか?」
「大丈夫です。」
「じゃあ、行って来る。」
「はい、待ってます。」
これで少しの間は一人になれるから、その間に出て行けば大丈夫だよね?
翔君、ごめんなさい。
何も伝えずに行く私を許して下さい。
保健室を出て行く翔君の後ろ姿を見送った後『エンジェル』に乗り保健室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!