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「お姫様、どうぞ乗って下さい。」
「はい。」
私に頭を下げた男の人は、楽しそうな表情で笑いながら車のドアを開けた。
「ああ!!お姫様は車椅子に乗る美少女だったね?気付かなかったよ。俺が抱き上げようか?」
車椅子に乗っている事に気付かない訳がないのに、私の事を馬鹿にしてるのね。
この人は外見でしか人を判断出来ない可哀相な人。
そんな人が翔君や皆を傷付けるなんて絶対に許せない。
「いいえ、自分で乗れます!!翔君以外の人に触れられたくありません。」
男の人を見上げて睨みつけ『エンジェル』から降りて車に乗り込んだ。
「ふーん、皆木以外の奴には触れられたくないか。くく、面白い!!」
「っ、きゃっ!!」
男の人は何かを思いついたように口角を上げて笑い、私を後部座席の奥に突き飛ばすと『エンジェル』をその場に残したまま車のドアを閉めた。
「車椅子は此処に置いて行こうか?お姫様を拉致した証拠になるしね?」
「っ、どうして!!私が貴方に着いて行けば翔君達を傷付けないって言ったのに!!」
「うーん、気が変わった。皆木の目の前でお姫様を奪ってやろうかと思ってね!!楽しいイベントになりそうだ!!くすくす。」
私の顎を指先で持ち上げて笑った男の人の瞳は黒く輝きのない色をしていた。
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