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「「きゃーっ!!皆木さんよ!!」」
「「翔さんー、かっこいい!!」」
「「私と付き合ってー!!」」
圭介さんが後部座席のドアを開け、翔君が車から下りた瞬間、地面が揺れるぐらいの大声で叫ぶ女の人達の声が辺りに響いた。
「杏樹ちゃん。『エンジェル』を準備しましたから、下りて大丈夫ですよ?どうぞ。」
「杏樹、車から下りるから来い。」
「……」
嫌!!
車から下りたくない。
翔君の名前を呼ぶ女の人達の声なんて聞きたくない。
名前を呼ばれた翔君が、女の人達に視線を向ける姿なんて見たくない。
翔君の瞳に、私以外の女の人が映るなんて絶対に嫌。
翔君が低く甘い声で名前を呼ぶのも、優しい眼差しで微笑みかけるのも、世界中で私だけにして欲しい。
校門前に集まっている女の人達のおかげで、翔君が今まで感じてきた嫉妬や束縛の気持ちが、私にも分かった気がする。
「おい、杏樹。大丈夫か?気分でも悪いのか?」
「……翔君。私、学校に行きたくありません。」
「は?急にどうしたんだ?」
「杏樹ちゃん、大丈夫ですか?」
「翔君、圭介さん、ごめんなさい!!私、今すぐ帰りたいです。」
心配そうな表情で私の顔を覗き込んだ翔君と圭介さんに、頭を下げて謝った私は、早くこの場から立ち去りたい気持ちで一杯だった。
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