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「おい、圭介。何笑ってんだ?」
「くっ、ははっ!!すみません。杏樹ちゃんが学校へ行きたくない理由が分かったので、思わず笑ってしまいました。」
「……理由は何だ?教えろ。」
「あははっ!!翔さん、少し落ち着いて下さい。」
眉間に皺を寄せて低い声を出した翔君を見て、圭介さんは困ったような表情で苦笑いを零した。
「圭介、何でもいいから早くしろ。」
「分かりました。杏樹ちゃんは、嫉妬したんです。」
「……は?嫉妬?」
「はい。翔さんの名前を呼ぶ女の子達に嫉妬したんです。そうですよね?杏樹ちゃん。」
圭介さんは、後部座席に座る私の顔を覗き込むように腰を屈めると、私に向かってウインクをしながら微笑んだ。
「圭介さんの言う通りです。私、校門前に居る女の人達に嫉妬しました。翔君の名前を呼んでる女の人達の声を聞きたくない。翔君が女の人達に視線を向けるのも嫌。」
「杏樹――…、」
「翔君には私だけを見ていて欲しい。でも、そんな事を言ったら翔君に嫌われるかもしれない。だから、そんな私の気持ちを翔君には知られたくなくて、帰りたいって言ったんです。ごめんなさい。」
自分の気持ちを全て話して頭を下げた私は、制服のスカートに零れ落ちる涙を見つめた。
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