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「杏樹。とりあえず、学校行くぞ。『エンジェル』に乗せるから、俺の首に腕回せ。」
「は、はい。ありがとうございます。」
翔君の考えが分からないまま、戸惑う心を隠すように翔君の首に腕を回すと、私を抱き上げて『エンジェル』に乗せた翔君は、私の背後に立ち、圭介さんに視線を向けた。
「じゃあな、圭介。行って来る。」
「はい。何かありましたら、すぐに連絡を下さい。」
「ああ、分かった。」
「では、失礼します。翔さん、杏樹ちゃん、行ってらっしゃい。」
「ああ。」
「圭介さん、送って頂いてありがとうございました。行って来ます。」
私達に向かって頭を下げる圭介さんに笑顔で手を振りながら『エンジェル』を押して歩き出した翔君と一緒に、校門前に集まる人達の輪の中に足を進めた。
「「翔さんー!!おはようございます!!」」
「「皆木さんー!!私達とも一緒に登校して下さいー!!」」
「「一度でいいからデートして欲しいー!!」」
私達が校門前に近付くと、自然と道が開き、前後左右から響く女の人達の甘い叫び声に、私は耳を塞ぎ俯いた。
やっぱり嫌!!
聞きたくない!!
翔君は私の大切な人なのに、どうして周りの人達は、私の存在を無視するの?
私が翔君に相応しくないから?
でも、翔君は私を選んでくれたのに……。
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