駆け出した春

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ターゲット5;大牟田敦士 「でもなあ…帰宅部がいいんですけど」 「そこを何とか!なっ!?」 大牟田に会うのは意外にも簡単だった。 the素朴、容姿は今まで会ってきた新入生の中で最も普通な少年だった。 2階から1階にかけての階段に男子がいたから、もしや…?と思ったら大牟田だったわけで。 「勝つ見込みなんてないでしょ?」 「あるね」 「今年入学した男子全員が野球部に入部すること事態がありえない」 「6人中4人は既に入部したようなもんだ」 「千葉県は全国行きのきっぷ1枚を巡る戦場です。何十の強豪校があります?うちでは無理です」 「7回勝てばいい。そのうちで強豪校のつぶし合いがたくさんある。するりするりと抜けていつの間にか千葉県の頂上だ。そして全国の頂上にもたつ!!」 「…………」 かなり冷静な奴だ、大牟田は俺の後を継いで是非ともキャプテンになって欲しいものだ。 「何故ですか」 「ん?」 「何故…弱小校で全国一を目指そうとするんですか?アニメの世界みたいな」 「理由、か」 「はい。先輩が弱小校で全国一を目指す理由が知りたいです。強豪校なら行けるのに」 高校球児なら誰もが目指すに違いない舞台、甲子園。 強豪校なら行けるだろう。スタメンか、ベンチか、…スタンドの応援団か。 だが俺には強豪校から目指して何が楽しいのかわからない。 「弱小校で野球が持つ真の面白さを知りたいんだ」 「面白さを…でも俺は」 「さすがだな。あかつき大学附属中学校野球部キャプテン、大牟田敦士」 「…そこまで調べがついているならはっきり言います。俺は中学校で野球をやめた。嫌いになったからだ。だから野球部には入りません」 …ふむ、こいつは攻め落とすのに苦労しそうだな。 さてはて、どうしたものかな。 「先輩」 「なんだ?」 「甲子園に行きたいのなら電車に乗った方が面白いですよ」 …そうだな。でも、 「全国の高校球児の思いを踏みにじる発言、許せねえな」
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