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「お姉さんがいい。…家あがっていい?」
「いや」
私は鞄とコンビニ袋を手にして、さっさと部屋に向かう。
悪ガキは慌てたように原付をおいて追いかけてきた。
エレベーターホールで追いつかれてしまう。
「ちょっとは俺と話してよ」
「あんたが変なこと言うから逃げるんじゃない」
「…なに言ったら逃げない?」
そんなのわかんない。
答えを持てないままエレベーターがきて扉は開く。
エレベーターに乗ると、悪ガキも乗ってきた。
もういいやと部屋のある3階を押して扉を閉める。
「…どうやったらお姉さんの名前教えてもらえる?どうやったらつきあえる?」
「だからなんで私なの?あんたかっこいい顔してるんだから、学校の女の子とつきあえば?」
私は悪ガキを見て、悪ガキはじっと私を見る。
…見とれるくらい整ったいい顔。
「……いや。お姉さんがいい。お姉さんに決めた」
「何を?」
「俺の童貞」
…殴っていいかな?
いいよね?
でも拳は痛いから足にする。
私はげしっと悪ガキの足を蹴ってやる。
「いてっ!…本気っ。俺、お姉さんがいい。教えて?」
「何を?」
「…セックスの仕方」
恥ずかしそうに悪ガキは言って、私はもう一度蹴ってやる。
「いてっ!……お願いっ」
エレベーターの扉が開いておりて、自分の部屋へまっすぐに向かって鍵を開ける。
悪ガキはそこまでついてきた。
私は悪ガキを振り返る。
顔はまだ少し幼いのに見上げてしまう背を持っているのが気に入らない。
「私より経験豊富なお姉様に教えてもらいな、クソガキ」
「……カイリって呼んで」
「カイリ」
「……俺とつきあって?」
「しつこいよ?」
「だってお姉さんがいいっ」
「おばさんでしょ?」
「お姉さんっ。…それ恨んでるからダメなの?…俺、なんでもするよ?」
なんかかわいくしおらしくなった。
犬みたいだ。
躾してみたい。
「お手」
手を差し出すと、悪ガキはちょんっと私の手に即、手を乗せてきた。
……少しだけからかわれてやろうか。
逃げるより楽だ。
Hなんてしないけど。
私は扉を開けて、悪ガキの手をひいて部屋に入る。
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