Tell me

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やめようって何度も思うのにやめられない。 どうしてもカイリじゃないとダメだなんて言わない。 どうしようもなくカイリに惚れてるなんて言わない。 その顔だって好きじゃない。 イケメンなんて嫌いだ。 年下だって好きじゃない。 頼れる年上とつきあってみたい。 …頼りにするってわかんないけど。 ご飯を食べて、洗い物も終わって、お風呂も入って。 カイリは緊張した顔でバスタオルだけの私の頬にふれる。 私は目を閉じて、その手に身を任せる。 その見た目よりがっしりした体は好きかもしれない。 素肌を重ねるのが気持ちいい。 その素肌にふれているのが気持ちいい。 ねぇ、ダーリン。 翔って名前を呼び捨てにする男は、あなただけでいい。 私の体を抱く腕はあなたの腕だけでいい。 そう思う。 だって、頭の中、もういらないこと、なんにも考えないでいられる。 ねぇ、ダーリン。 もっと強く抱いていて。 絶対に離してやらないって束縛していて。 愛していて。 かわいげもない私だけど。 カイリの体にしがみつくように腕を回して、呼吸を整えていく。 カイリの呼吸が耳元に聞こえる。 「……もう一回?」 「誰も言ってない」 「何回でもできるよ?」 私はカイリの頭を軽く叩いて、その素肌に擦り寄る。 「いてっ。……ねぇ、翔ちゃん。このままずーっとつきあってたら、そのうち結婚してくれる?」 「まだ1年もたってないんですけど。というか、あんたモテるじゃない」 「モテるからなに?俺、翔ちゃんとしかつきあう気ないよ。すっげぇ、今、幸せ。幸せだから、翔ちゃんと結婚したいって思った。ずっとずーっと一緒にいたい」 耳元、甘く口説くように言ってくれて、なんか恥ずかしくなる。 何も答えないでやった。 結婚とかそんなのわかんない。 「ねぇ、翔ちゃん教えて。俺のこと、好き?」 好きか嫌いか。 嫌い。 本当に嫌い。 視線をカイリに向けると、カイリは笑顔をくれる。 かわいいから嫌い。 その笑顔。 頬を摘まんで、ぎゅっと引っ張って、私はカイリに背を向けるように転がる。 カイリはぶーぶー言いながら、私の体に腕を回して抱きついてくる。 カイリの腕枕。 その手にふれていると、そのまま眠った。 …心の中、うれしいって胸がドキドキしていた。
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