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1ヶ月くらい休みたい。
本気で思いながらも旅から戻るといつもの日常。
カイリは遅くに帰ってきて、私の隣に転がって抱きついてきて。
寝ていた私が起こされる。
「邪魔」
「起こした?起きた?翔ちゃん、疲れたよ」
ごめんって言うこともなく、私に擦り寄ってカイリは甘える。
起こされてちょっと不機嫌。
胸に顔を埋めてくるカイリの頭を掴んで、指圧してやる。
「痛い痛い痛いっ。だって疲れたんだってばっ。もう深夜だよ、深夜っ。あり得なくねっ?俺、明日、学校だっていうのにっ」
「大学生、さっさと寝ろ」
「寝るけど。愚痴らせてくれてもいいんじゃねっ?」
カイリは元気に私に愚痴りまくる。
愚痴なんて男らしくない。
男なら堪えろ。
なんて思いながら、私は夢の中に微睡んでいく。
カイリの愚痴が子守歌みたいになる。
「翔ちゃん、翔ちゃん」
なんて私の返事がないことにカイリが声をかけてくるのが遠くに聞こえる。
唇にキスされまくって、また微睡む意識から戻されて、私はおとなしく寝なさいとカイリの頭を腕に抱く。
「仕事も大学も翔ちゃんの望みだし、やめるつもりないけど。俺ね、翔ちゃん。翔ちゃんがいなくなったら、なんのために生きてるのか、本気でわからなくなりそう。自分のためなんかじゃないよ、これ。俺は翔ちゃんがいるから毎日楽しい。毎日幸せなんだよ」
もういい。
何回も何回も聞いた。
もうつきあって4年過ぎた。
それをずっと言い続けられるカイリの気持ち、逆に疑いそう。
なんて思いながら、半分夢の中。
私の頭はカイリの腕に乗せられる。
「……でも、ね。たまーに不安になる。淋しくなる。翔ちゃんは俺のこと好き?」
これは乙女だろう。
かわいらしすぎる。
「……言ってくれないよな、いつも。俺ばっかり。
俺が大学出るときには、翔ちゃんがどうしたいのか聞かせてほしい。それが俺の望み」
カイリが大学を出るときには、終わりがくるらしい。
言ってやんないとね。
ずっと私のものでいなくてもいいって。
カイリの望むつきあいをくれる綺麗な女の子はいくらでもいる。
…ごめんね。
私が甘えてるだけ。
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