Dreaming with you

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カイリがご飯を作ってる間、ギターを弾いて遊んでいた。 カイリの商売道具だけど。 カイリは気にしない。 きっと壊れても気にしない。 今、カイリが歌ってるのは、私がやれって言ったから。 「へい、お待ち。親子丼」 カイリは2つの丼を机に置いて、私はギターをおいてさっそくいただく。 作ってくれなくてもいいけど、あったかいご飯はおいしい。 「翔ちゃんもギターやる?というか、さっきのギターけっこう完璧だし、歌も歌ってくれたらいいのに」 カイリもご飯をガツガツ食べて、合間に言ってくる。 「あんなクサイ歌詞歌えない」 「ひどっ。そんなつもりないのに。あれは俺の恋愛をもとにつくった…」 「あんたの恋愛なんてほとんど私じゃないの?」 「もちろん。はっきりいって他にいない」 それでいいのか? なんてカイリは疑問に思わないのだろうか? まぁ…わかってるんだけど。 歌詞が私にあてられたラブレターみたいなものになってることは。 そんなにカイリが知ってる女なんていないだろうし…。 それをデビュー曲にしちゃうってどうなんだろうと思うんだけど。 というか女と一緒に暮らしてるのどうなのって思うんだけど。 カイリの事務所からはまだ何も言われてない。 …引き離してくれていいのに。 ご飯を食べ終わって洗い物をすませると、カイリはギターを手にして、目の前で弾いて歌ってくれる。 テレビではアップテンポなギターだったけど、原曲ともいえるバラードにして。 歌いながら私を見て、笑ってみせる。 「翔ちゃんも歌ってってば。俺と翔ちゃんの歌」 「そんな曲名つけてないでしょ」 言ったら、カイリはにやっと笑いやがる。 「『淋しがり』。翔ちゃんのこと」 ムカつく。 カイリを足で蹴ってやろうとしたら、カイリは笑ってギターを離して、私に腕をのばしてくる。 その手に捕まらないように逃げて、もういいやとお風呂にする。 「翔ちゃん、もっとかまってーっ」 「甘えん坊」 「翔ちゃんもだろ」 年下に言われたくない。 でも…もうじゅうぶんにわかってるよね、さすがに。
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