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これで本当にいいのか?私。
何度も何度も自分に問いかけた。
だけど出てくる答えは、今そこにある自分の気持ちに正直にならなきゃというもの。
あなたと出会って私は幸せを知った。
知らなければ、もっと他の理想の人との恋愛も考えられたのにとも思う。
今はあなたしか愛せそうにない自分が嫌いで、でもそんな自分を認めてやりたい。
あなたがうれしそうに笑うから。
あなたを喜ばせたい。
そんな愛情。
人のざわめきもうるさい街中。
私は一人、ぼんやりと立っている。
そんな私に声をかけてきたのは、久しぶりになる智と哲也だった。
「キノっ?マジで?久しぶりだな。最近どうしてるんだよ?」
なんていう智と。
「おまえ、なんにも変わってないな。たまには連絡とれよ。無視すんなよ」
なんていう哲也。
変わっていないのはあんたたちのほうだ。
いつまでも友達顔しやがって。
「久しぶり。…就職できたの?」
「いつの話?俺も哲也も普通に働いているって。キノはまだフリーター?というか、どっか店入って話すか」
「カラオケでもいく?」
なんて、挨拶返しただけなのに、どこかに連れ去られそうになっている。
相変わらずだ。
私を遊びにつきあわせやがる。
…でもそういうのうれしかった。
下心関係なく、好意ではあったと思うし。
哲也がそこにいるのに、なんだか普通。
あんなに悔しく思ったことのある相手なのに、恨む気持ちももうない。
ただの同級生。
「日曜の昼間、私を誘っていないで彼女とデートでもすれば?あ、もしかしてもう結婚した?…誰かさんは失敗してできちゃったとかしてそう」
私はちらっと哲也を見て言ってやる。
哲也も私の言葉と視線に気がつく。
「おまえはどういう目で俺を見ているんだよ。なんでそんな最低男に俺をしたがる?…今は彼女いない」
「女好き。コクられたら調子にのって誰でもいいからつきあうやつ。自分で言ったことあるのに忘れた?」
「そんなことしたことねぇよっ。うるせぇよ、馬鹿。ほら、店いくぞ」
哲也は話を終わらせようと背を向ける。
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