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智と哲也に私が絡まれたせいでずたぼろになったゲリラライブ。
こんなやる気のないミュージシャンなんて抱えなくていいんじゃないかと事務所に思うのに、カイリはクビになることもなく、仕事も入れられて働かされている。
ファンはあの騒動で減ったといえば減ったけど、カイリが結婚していようが、馬鹿だろうが気に入ってくれている人はまだいるらしい。
カイリと暮らす家は事務所に勧められたマンション。
カイリはそのキッチンで楽しそうに料理をして、出来上がったものを私の前に運んでくる。
お腹がきゅー。
おいしそうなにおい。
「はい、お待たせ。鶏モモ香草グリルとミネストローネ、ツナとイカのサラダ。ハニーのために時間かけたよ?」
「いただきます」
私はさっそくぱくぱく食べて、カイリはその間にビールもついでくれる。
いい嫁である。
稼いでくれるし、料理も作ってくれるし。
しかもそれを嫌がらないのが一番いい。
飽きたとなってもおかしくないのに、飽きずに私を食べさせてくれる。
こんないい嫁はどこを探してもいないと思う。
「おいしい?翔ちゃん」
私はうんうん頷いて、お腹いっぱい満足まで食べまくる。
「よかった。んじゃ、ご飯終わったら、いっぱいいっぱいしよ?翔ちゃんを妊婦にさせないと」
なんていうことを笑顔で言われて、それは微妙に思う私がいる。
いいところもあるし、それは嫌だなと思うところもある。
完璧に理想の人というものは世の中にはいないと思う。
「ねぇ?私のどこがよくて結婚したの?」
何度も聞いたようなことを聞くと、カイリは少し考えてくれる。
「俺がいないと生きられなさそうなところ」
誉められてはいない。
どう考えても誉められていない。
何度も言われるけど、まったくうれしくない。
「あんたが私がいないと生きられないのまちがいじゃない?」
まったく思ってもいないけど言い返してみた。
だってカイリはモテモテだ。
私じゃなくても相手はいくらでもいる。
なのに、この馬鹿は私の何に騙されているのか、私がすごーく好き。
私の全部を受け止めて、怒ったりもするし泣いたりもするけど、私から離れられない。
それさえも私を好きの一部なんだろう。
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