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口元に手を当て、クスリと上品に笑う仕草に思わずどきりとする。
彼女の一挙手一投足が俺の中の何かを刺激する。
怖いのに…、この場から今にでも離れたいのに、彼女の総てがそれを許さない。
姫「…何か用?」
凛とした声が響く。
彼女の呪縛から解かれる。
知らぬ間に息すらも止まっていたようで、身体が酸素を求める。
そんな様子を見て彼女は笑う。
美「…お姫様に守られる王子様なんて滑稽ね。」
姫「滑稽だろうとなんでもいい。
でも、手を出すというなら容赦しないよ。」
美「別に、貴女の王子様に興味はないわ。
私が欲しいのはただ1人だけだもの。」
訳が分からない。
この2人は何の話をしているんだ。
姫「だったら何の用なの?」
美「宣戦布告。」
え、何、何なの?
展開についていけない。
美「私、綾吊美月は、人間及び人間に加担する存在を全て排除し、私達にとって理想的な世界を作り上げることを、今此処に宣言します。」
何を言っているんだこの子は。
アニメの見過ぎじゃないのか?
――ビュッ
何かが風を切る音。
振り返ればそこには姫月。
姫「言いたいことはそれだけ?」
その手には細身の剣。
柄の部分のデザインに見覚えがある…。
あれは姫月が学校外では常に着けてる、クロスモチーフのネックレスとブレスレットと同じだ。
美「あらやだ、怖ーい。
なぁに? この場で殺しちゃおうって訳?」
姫「それ以外に見えるというのなら貴女は相当脳天気。」
澄んだ青色だったはずの瞳は、血の様に赤く輝いていた。
話について行けない上に、酷く剣呑な空気。
姫「言いたいことは終わり?
なら、……消えて。」
――キーン
金属同士がぶつかり合う様な音。
あまりにも一瞬の出来事過ぎて、何が起きたか分からない。
教室の真ん中に一緒に立っていた筈の姫月は、窓辺の綾吊さんのもとにいた。
姫月の銀の剣は紫色に淡く輝く何かによって綾吊さんに到達するのを阻まれていた。
え、何コレ? 夢?
俺いつの間にか寝てた?
ふと隣を見れば同じ様に呆気に取られている咲月。
うん、良し、万が一現実でも、置いてきぼりなのは俺だけじゃない。
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