剣術指南

2/2
前へ
/340ページ
次へ
私は北辰一刀流の正統伝承者。後鬼 泰次と申します。 これまで私が実践の中で、培ってきた剣術のすべてを皆さんにお伝えしようと思う。 まず、刀の選び方です。大業物と呼ばれる優れた名刀があります。切れ味抜群なのですが、問題は刃重です。 重すぎて刀をコントロールできなければ意味がありません。十分な握力が必要です。握力があれば刃先はブレずに真っ直ぐ敵に伸びていきますが、握力がないと刃先がぶれるばかりか、敵に当たらないという事態も招きかねません。自分の身の丈に合った刀を選ぶべきでしょう。 手に取り、真っ直ぐに腕を伸ばして刃先を見ます。ぶれることなく、かつある程度の手応えと言うか重みも感じることができれば合格です。あまりに軽すぎるのもやはり刃先がブレて問題なのです。 さて、剣術は腕力勝負ではありません。腕力のみで敵を斬ろうと思ってもなかなかできるものではありません。重要なのは踏み込みです。鋭い重心移動で刃先に体重を乗せていくことが大切です。 踏み込みにもコツがあります。ダン!と床に足を踏み下ろして踏み込む剣士がいますが、これはNGです。上下の動きは力のロスです。あくまでも水平移動です。軽やかな、かつ鋭い水平移動による踏み込み。目指すはこれです。ちょうどスケートのように床を水平に蹴り、優しく踏み込む足を移動させ、一気に刀へ体重を乗せていくのです。すると、一刀両断。斬れないものはありません。 次に刀の振り方ですが、大振りはいけません。敵へ最短距離で真っ直ぐに刃先が伸びていくのが理想です。剣道で言う突きに近い形ですが、ある程度遠心力も使った方がいいでしょう。突きに近い形ではありますが、小さな弧も描き、力を伝えます。 切っ先3寸とよく言います。刃先から三寸までが遠心力の効果でスピードが乗り、よく斬れるのです。 斬った後は腕が真っ直ぐに伸び切り手首も返ってなければなりません。 そして、最も大事なのが、この動作を一連の動きとして滑らかに連動できるように身体に叩き込むのです。頭でわかっていても実践では何の役にも立ちません。この技が習得出来れば、敵が思いも寄らない遠い間合いからの攻撃が可能となります。アッと思った時はもう遅い。一撃必殺です。 後は修練あるのみです。 ドリャ~!ベチャ。 「げ。勢いつき過ぎた。内臓出ちゃったよ。汚いなあ。やっぱりフライデー丸めた業物が一番いいなあ。」
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

284人が本棚に入れています
本棚に追加