第七章

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『さて、みんな分かってるとは思うが、戦争が始まる。人類の歴史には決して残ることのない、闇に葬られる戦争だ』 『祝日戦争……、祝日戦争が、始まる』 あの人は、そこで一度間を置いた。 祝日戦争、という言葉の持つ不思議な重みを、噛みしめているようにも思える。 しかしそこには、恐怖や緊張、怒りなどといった感情は入る余地がない。 むしろ、戦争が始まるのに、それを皆に知らせるのが楽しくて仕方がないように。 あの人も、戦争が好きなのだろうか。 「も」と言ったのは、もちろんリリ自身を考慮してのことだ。 きっと、今前で話してるあの人も同じように考えているだろう、と、リリは確信めいたものを感じていた。 彼らにとって戦争は、嫌いとか好きとか、怖いとか、善悪では測れないものであった。 特にリリにとっては、戦争がイイのかワルイのかなんてどっちでも良い。 ただそこで人が沢山死んで、狂おしいくらい気持ちヨクなれれば、あとのことは眼中にないのだった。 ……少しは慌てるんじゃないだろうか…… 意図せずして、先ほど考えていたことを思い出す。 今前で話してるあの人も自分も、戦争が始まるってのに全く緊張してないんだから。 憧れや親愛に似た感情を抱く『あの人』と同じという事実は、リリの自尊心を大いに満足させた。
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