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『さて、みんな分かってるとは思うが、戦争が始まる。人類の歴史には決して残ることのない、闇に葬られる戦争だ』
『祝日戦争……、祝日戦争が、始まる』
あの人は、そこで一度間を置いた。
祝日戦争、という言葉の持つ不思議な重みを、噛みしめているようにも思える。
しかしそこには、恐怖や緊張、怒りなどといった感情は入る余地がない。
むしろ、戦争が始まるのに、それを皆に知らせるのが楽しくて仕方がないように。
あの人も、戦争が好きなのだろうか。
「も」と言ったのは、もちろんリリ自身を考慮してのことだ。
きっと、今前で話してるあの人も同じように考えているだろう、と、リリは確信めいたものを感じていた。
彼らにとって戦争は、嫌いとか好きとか、怖いとか、善悪では測れないものであった。
特にリリにとっては、戦争がイイのかワルイのかなんてどっちでも良い。
ただそこで人が沢山死んで、狂おしいくらい気持ちヨクなれれば、あとのことは眼中にないのだった。
……少しは慌てるんじゃないだろうか……
意図せずして、先ほど考えていたことを思い出す。
今前で話してるあの人も自分も、戦争が始まるってのに全く緊張してないんだから。
憧れや親愛に似た感情を抱く『あの人』と同じという事実は、リリの自尊心を大いに満足させた。
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