第七章

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──『HOME』:会議室── 『遅かったじゃないか、リリ』 『キャハハ、悪かったよォ』 笑いながら言って、腰掛ける。 ガゼルの話の通り、会議室にはもうみんなが集まっていた。 相変わらず薄暗い。 細長いテーブルに全員が向かい合う形で座ってるけど、多分一般人なら、目を凝らさないと顔もはっきりと分からないくらいだ。 私の向かいだって、ぼやっとした影みたいで、よく見えな…… あ、あれ遠隔映像だ。 見えなくて当然。 『さー、ようやくみんな、集まったみたいだねぇ』 その時、奥に座っていた『あの人』が口を開いた。 この人はいつも顔が見えない。遠隔映像でもないのに。 『まず初めにお礼を言っておこう。皆、苦しい中よく頑張ってくれた』 顔は見えない。 でもその声や雰囲気はあたたかく、私たちを包む。 『ようやく、最後の国、日本での仲間集めが終わった。私たちの目的に賛同してくれる者が多く、とても嬉しく思っている』 それは、演説とかスピーチとか、そういう『いかにも』なこととはかけ離れていた。 実際に『HOME』においては頂点たる地位にいるのに、『あの人』の話はそれを全く感じさせない。 まるで暖炉を囲んで、家族と話をしているような。 『あの人』の声を聴くたびに強く感じる。 ここは、『HOME』なのだと。
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