第七章

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『「AWAY」については論外だ。どうやら彼らにとって世界は、守るべきものであるらしい。振られた相手に未だ愛を叫び続けるようで、見ていて滑稽だ』 彼はここに来て、初めて感情を表したように見えた。 怒りと言うよりは、もう少しドロドロとしたこれは……。 『滑稽だよ。殺したくなるくらい』 軽蔑だ。 『AWAY』に対する。 彼らに対しての、怒りと、嫌悪と、侮蔑をごちゃまぜにしたようなそれは、『同じ考えを持つものとしてここにいる』私でも、恐怖を感じるほどの強さであった。 私はここで少し考えてみた。 この戦争において、正義は一体どっちなのだろうかと。 皆それぞれの考えと能力を以て様々に思考し、判断し、どちらかについて戦っている。 ある人は、自分が正義だという。 彼が攻撃している人は、自分が正義だと言う。 いたちごっこに繰り返される正義、正義、また正義が、私の脳内をぐるぐると反芻した。 『ならば世界は何故、我々を切り捨てたのか?何故我々を切り捨て、尚それすらも知らずにのうのうと生きている人々を応援する?』 『そこに暮らす人々は、無知だ。無知は罪ではない。しかし、世の中には知っておくべきこともある。それを知らしめることもまた、罪ではない』 もう世界なんてないのに、『世の中』なんて言葉、よく使えるよ。
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