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『……っと、話が長くなってしまったね』
だが瞬きをした次の一瞬にはもう、雲間から覗く太陽みたいに垣間見た表情も消え、いつもの優しい話し声に変わった。
不思議と会議室の空気も緩んだ。
凍り付いて固形となっていた空気が、気体に戻る。
『さぁ、行こうか諸君!祝日戦争が始まるぞ!いよいよだ!!』
私よりずっと楽しそうなあの人は言った。
その声の弾みようときたら、明らかに明日の遠足のお菓子を選んでいる子どもだ。
一応こんなでも、私たちのリーダーって扱いなのにな。
いや、この場合は、こんなだからこそ、の方が正しいかもしれない。
締りがないと言ってしまえばそれまでだけど、それでもみんな、リーダーの事を心から信用している。
彼がさっき言ったように、様々な考えを持ってここに来た私たちだけど、彼と一緒なら、どんな望みでも叶いそうな気がしてくるのだ。
彼の優しい光が、私たちが負った傷を、そっと拭っていく。
私たちは『蛾』だ。
彼の大きな光に魅せられて、蛾のようにその周りを飛び回る。
『はっはっは、いざ行かん!!全てを壊すべく、現実世界へ!!』
相手はきっと、『世界に住む人々にとっての』正義を掲げて、猛然と向かってくるだろう。
それでも、私たちは彼の周りの蛾であり続ける。
例え自分がどんなに醜くても、どんなに悪でも。
光を決して消されぬように、その周りを必死で飛び回る。
────誰が、消させるものか。
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