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…
すべては順調に見えた。
手下を広く配置し、警戒は万全だ。
ネズミ一匹すら入る隙もなく、狙撃で出し抜く事や爆発物を仕掛けられている心配もない。
冬も近いスタテンアイランド区は肌寒い。
…
「兄貴」
「あぁ?」
「部下の配置が完了した。奴らの到着時刻は三十分後だ」
トニーはくわえていた葉巻を地面に投げ捨てると、高そうな革靴の底でそれをもみ消した。
「何の問題もねぇさ。
お前はいちいち予防線を張り過ぎなんだよ。わかるか、ウィリアム?」
「そうかもしれないが…何かあってからでは遅いからな。
なにより、俺は中国人なんざ信用してない。
…残り二十九分だ」
ウィリアムはスーツの袖を軽く捲り、セイコー製の腕時計をちらりと見た。
「バカやろう。奴らとは何度も取り引きしてきたはずだ」
「だが今回の奴は紹介だ。前の奴とは違う。
たとえソイツらが同じファミリー内でもな」
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