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☆
矢持一花は、布団にもぐりながら今日あったことを思いだしていた。
それは、今朝。
横断歩道を渡ろうと、走ってきたところで信号が赤に変わった。
残念がって肩をおとし、友達のメールの返信の続きをしていた時、
『ガラッ』
と、突然大きな音がした。
少し驚いて、周りを見渡すと、なぜか、みんなが私の方を見ていた。
正確に言うと、きっと私の真上を見ていた。
「…っ」
その瞬間、とても大きな音がして、地面が揺れ、よろめいた先には、私がいた場所に何本もの鉄柱が突き刺さっていた。
それなのに、私は怪我一つすることなく、むしろ野次馬の一人としてその場を見ていた。
私は、横断歩道を渡り切っていた。
私が立っていた場所の隣には、マンションか何かを建てるのだろう、工事が行われていた。
工事に使っていた鉄柱だろうと私は簡単に想像をした。
いつのまにか、一花は横断歩道を渡り切っていたと思い込んでいた。
――目があった。
何故、あったのかはわからない。
もしかしたら自分と同じ学校の制服を着ていたからかもしれない。
もしかしたら、同じクラスだからかもしれない。
私の反対側から事故を見ていた、
「池上颯太」
髪はとても黒く、肌の白さがとても目立つ。整った顔立ちをしていて、とても静か。
しかし、クラスからはみっている感もなく、仲のいい友達は普通にいる。
少し、おかしなところもあるのだが、ただおとなしい男子としか認識していない。
彼は、目が合うと、私の方を見て優しく微笑んだ。
そして、
「無事でよかった」
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