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雀のさえずりと瞼の裏に仄かな光を感じ、私はゆっくりと瞳を開いた。
未だ朦朧とする意識を払いのけるように上体を起こして伸びをひとつしてから視線を落とすと、すやすやと気持ち良さそうに寝息を立てている侑哉の姿が映りこむ。
ネコのように繊細な茶髪はさらりと乱れ、すうっと綺麗に通った鼻筋と、その下の少し厚みがある形のよい唇が堪らなく色っぽい――
いつ見ても見惚れてしまうのは、彼が私の旦那様だから、という理由だけではないはず。
そんな寝顔を前に、「おはよ」と小さな小さな声でこそりと呟いてから、侑哉の厚めの唇に自分の唇をそっと重ねる――これが私の『日課』。
侑哉は全く起きる素振りは見られない。余程仕事で疲れているのだろう――
いや、そうじゃなくても昨晩は一段と激しかったから起きれなくてもしょうがないか。
夫婦用に購入したダブルベッドの低反発からそろり脱出した私は、部屋の隅っこにある『寝不足の理由』が眠る小さな箱庭へと足を伸ばした。
天井から吊り下げられたメリーをじっと見上げながら、紅葉のように小さく、あったかい手のひらで空を掴む六ヶ月の陽菜はベビーベッドの柵から乗り出すように覗き込んだ私に、「まぁまんまんま」と、とろける笑顔を向けてきた。
「おはよ、陽菜。
昨日の夜はたくさん起きちゃったね……まだ寝てても大丈夫だよー」
今からママは朝ごはん作らないといけないからね、そう付け加えて。
一通りの世話をし終えた後、陽菜を肩掛けしたスリングに乗せて朝食準備に取り掛かった。
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