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今日は私達の五回目の結婚記念日。
そして、五年目にしてようやく授かった赤ちゃん――生後半年の陽菜と迎える初めての記念日。
一年目は二人で映画を観に行った。
二年目は二人でケーキを食べた。
三年目は二人で遊園地に行った。
四年目は二人でドライブデートした。
今年、あいにく侑哉は仕事。
それでも記念日はお祝いしたいねという話になって、侑哉の定時帰社に合わせて最寄り駅で待ち合わせすることになった。
今年は、というか、もう二人だけで過ごすことなんて出来ないんだろうなぁ。
陽菜をスリングで抱きながら洗濯を干し終え、目につく場所だけパパッと掃除する――肩が凝った。
しかしそのまま下ろして離れようものならわんわんと大声で泣きわめくのは目に見えている。
仕方ない、休憩とばかりにラグに腰を下ろした私はスリングから陽菜を下ろし膝に乗せ、顔を覗き込んだ。
ハムスターみたいにつぶらでこぼれ落ちそうなほど大きな黒い瞳はきらきらと光輝き、ピンク色に染まる頬は触れるとしっとりすべすべ、まだ歯がないかわいらしい唇は「まんまんま……」と舌足らずに甘えた声を出す。
眼は私似、眉と唇は侑哉似で、なんて毎日話してる。そんな他愛ないことですら愛しさを感じる。
「ふぇええええん」
突然陽菜が泣き出すのも、もう想定内になった。
遊びをしていない時のぐずりは大抵二択。
お腹が減ったのかな?
おしりが気持ち悪いのかな?
私はおむつの具合を見てから長座布団にそろりと寝かせ、胸元のホックを外した。
経験上、お腹を満たしてからベッドに下ろそうとすると起きてしまうことが身にしみてわかっているので、ここは添い寝しながらの授乳が楽にできる。
まるでわかっていたかのように吸い付く陽菜を見ていると、思わず微笑んでしまう。
それにしても、冷静に考えてみると、ところ構わず胸を晒すなんて――出産前は思いもしなかったなぁ。
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