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――まずいっ!このままじゃ間に合わない!!
時計は午後三時を回っていた。
待ち合わせは午後五時半。
それまでに洗濯物や布団を取り込んだりは勿論、着替えやメイク、そして何よりも駅までベビーカーを押しての徒歩……
途中で陽菜の機嫌が悪くなれば近くで休憩取ったり、お店の化粧室に駆け込んだりなど予想外のハプニングに見舞われたりする。
時間はいくらあっても足りない。
「ごめんね、陽菜。少し遊んでてね」
部屋隅にあるベビーベッドに陽菜を下ろし、メリーを掛けてやる。
落ち着いたことを見計らい、すぐさま準備に取り掛かった。
数分も経たずに聞こえてくる泣き声が私の脳を揺らす――ああっ、もうっ!
出来るだけ早く、早く――焦れば焦るほどミスをするもので、取り込もうと手を伸ばしたが最後、ランドリーハンガーごと地面に落ちてしまった。
昨晩降った雨のせいで、払っただけで済む筈もなく、また汚れ物に逆戻り。
そうこうしている間にも陽菜の泣き声がどんどん激しさを増していく。
「うぎゃぁあああああああ!!」
ダメだ、これはいったん戻らないと。
時間に追われるとイライラが募って仕方ない。
私が抱き上げた瞬間、陽菜はぴたりと泣き止み、「まんまんま」と笑顔を振り撒いてきた。
それには思わず脱力して、陽菜を抱いたまま、へなへなと座り込んでしまった。
「あ、ああ……うん、陽菜…、はぁ」
泣きたいのはこっちだよ、陽菜。
――その時。
ピンポーン、と呼鈴が鳴った。
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