Wedding anniversary

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 あぁっ、もうっ。  こんな忙しい時に……!  頭はボサボサのまま、顔はもちろん素っぴんだし、服は部屋着のまま――こんな状態で来客!?  新聞の勧誘だったら「忙しい」で追い払ってしまおうか――そう思いながら、やや乱暴気味に扉を開いて。 「え、――えぇっ!? お、お母さん!?」  思わず眼を丸くした。 そこにいたのは実母――隣県に独り暮らししているはずなのに、何故?  顔にはてなマークを浮かばせていたからだろう、お母さんはうふふ、と楽しそうに笑った。 「あらら、侑哉さんの言った通りね~、お母さん来てよかったわ~♪」  そう言いながら、母は慣れた手付きで私の腕から陽菜を受け取り、壊れ物を扱うようにしてそっと抱き上げた。 「陽菜、ばーばですよ~、久しぶりね~」 「な、何しに……っていうか、お母さん、侑哉が言ってた、って何なの?」  満面の笑みとかん高い声色が一転、一気に落ちたトーンとテンションを私に向けてきた。 「……侑哉さんから電話があったのよ。 あんた陽菜のことや家事はお母さんに任せていいから、 早く支度しなさい!」  侑哉……お母さんに電話して、陽菜の面倒をお願いしてくれてたんだ……!  それだけで、胸がいっぱいで。 「ありがとう……お母さん…!」 「あらあら、お礼なら侑哉さんに言いなさい。  ―――結婚記念日、おめでとう」 「行ってきますっ!」  見送りしてくれるお母さんと久しぶりに『ばーば』と逢えた嬉しさで機嫌がいい陽菜に見送られて、私は駅まで急いだ。
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