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「オ? ナンダコイツ?」
「チッセーローブヤローダ!」
くすんだ茶色の体をした魔物たちが、いつの間にか目の前にいる人物に気付いて喚き散らす。
その人物は一見黒いかと思われるほど深い紺のローブを被っている。
更に特筆すべき点は、魔物たちも口にしていたように──
──背丈が小さい。子供同然の高さだ。
「野郎って、私は男じゃないんですけど。」
そして、そう呟く声は驚くべきことに若い娘のようである。
「キィシャシャ! チッコイオンナダ!」
「クッテヤル!」
そんな物騒な言葉を口々に叫んだ魔物たちは、恐らく若い娘であろう人物に襲いかかろうとして──
「まったく、言葉を理解できるほどの知性がありながらこんな村里の近くに屯するとは。
討伐してくれと訴えているようなものです。」
──呆れた娘に──
「《雷波(らいは)》」
──息の根を止められてしまった。
先程までギャアギャアと騒いでいた何千という魔物たちはたったひとつの魔法によって、全て殲滅された。
「《埋葬》」
殲滅された魔物の全ては沈みこむように土のなかに姿を消した。
「はい、依頼完遂。
《転移》」
パンパンと手を叩いた娘はフッと消えた。
その地に多くの魔物がいたことを示すものは、何もなく、ただずっとその姿であったようである。
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