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「……ちょっと話題を変えようか……。真桜が風邪をひいてるのに何で真桜の両親が2人ともいないの?今日、日曜日でしょ?」
「…お父さんはゴルフ、お母さんは同窓会でたぶん夜遅くまで帰ってきません。」
「真桜はそれで平気なの?」
私は心配させないように笑った。
「はい、いつものことだからもう慣れてます。」
沖田さんの顔が一瞬曇る。
「そんなの慣れなくていい……。」
「平気です。ひとりの方が気が楽です。」
笑わなくちゃ……。
泣いちゃダメ……。
ここで泣いたら私は自分が可哀想な子だって認めるようで嫌だった。
だから精いっぱい笑ってごまかした。
「真桜……。」
沖田さんは私の名前を呟くと私をベットから起こし、優しく抱きしめた。
「もういい……もう無理して笑わなくていいから。泣きたい時は泣きな……。」
その言葉を言われた瞬間、私の目から涙が溢れてきた。
私はしばらくの間、抱きしめてくれる沖田さんの肩にもたれかかって泣いた。
「沖田さん……本当はね、ずっと誰かにそう言ってもらいたかったんです……。もういいよ…もう泣いてもいいんだよって。」
「周りのみんなは、私の笑顔が好きだって言ってくれるから、いつも笑顔でいようって思ってた……。」
「うん……。」
「笑っていれば、誰かに愛してもらえると思ってたんです。沖田さんにも……。」
すると沖田さんは、私の顔を両手で覆って優しく私の涙を拭った。
「真桜、僕は真桜の笑顔が好きだけど、泣いている顔も好きなんだ。」
「どんな顔をしていても真桜が真桜だから好きなんだ。真桜のすべてが愛おしい。分かる?」
私は泣きながら頷く。
「僕は真桜だけ、真桜しかいらない。真桜のことなら何でも知りたい。真桜のことだから何でも知りたい……。」
「だから言って……何があったの?何で昨日、様子がおかしかったの?」
……もう嘘はつけない。
私は観念して栄太郎のことを言うことにした。
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