入学と始まり

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「ちゃんと持った?」 「持った持った。 準備は完璧だよ」 早朝、俺は荷物が山ほど積み込まれた鞄を持ち上げて玄関まで来た。 俺は準備は万端と言ってるのだが、どうにも母さんはそれを信じちゃくれないみたいだ。 「あんた、父さんに似てうっかりなとこあるから心配だわ」 「大丈夫だって。 さすがに今日ヘマすることはないからさ」 「でもね~」 ダメだ、こりゃキリがない。 そう思っていた最中、玄関にチャイムの音が響き渡る。 どうやらあいつらの準備もできたみたいだ。 「母さん、弘樹達が来たみたいだからそろそろ行くよ」 「そうみたいね……頑張りなさいよ」 「もちろん! じゃあ、行ってきます」 「行ってらっしゃい。 気をつけるのよ」 母さんに手を振ってから、俺は扉を開いて外に出た。 そこには俺がよく知る二人が立ってた。 「やぁ、巧。 おはよう」 「おっす、弘樹。それに飛鳥も」 「おっはよ。 昨日はよく眠れた?」 「当たり前だろ? まぁ、早く寝すぎて4時に起きちまったけどな」 「わぁ、相変わらず巧はバカだ~」 「バカ言うな。 このツインテール女」 「ツインテールの何が悪いのさ! 私のチャームポイントじゃん」 あぁ、確かにチャームポイントだろう。 綺麗な黒髪のツインテールが風で靡くのを見ながらそう思った。 だがしかし…… 「お前、高校生になったらツインテールやめるとか言ってたよな」 ちなみに理由は子供っぽいから、だと。 まぁ、目の前の飛鳥はどこからどう見てもツインテールであるわけで。 「これが一番落ち着くからいいじゃん! いちいち言わなくていいの!」 「俺なんで怒られてんの!?」 「まぁまぁ、2人共喧嘩はダメだよ」 口喧嘩になりかけたところで弘樹によって止められる。 そして弘樹は俺に時計を見せてきた。 「見ての通り時間が迫ってきてるからそろそろ行こうよ」 「えっ? あ、ホントだ。 巧と言い合いしてる場合じゃないね 」 「んじゃ……急ぐとするか」 「うん、別にそこまで急ぐ必要は無いんだけどね」 「無いのかよ!」 一人で急ごうとした俺がバカみたいじゃないか……
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