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「な……なななななな何をするのじゃっ!イキナリ……死ぬかと思ったぞ!」
「こんな所で寝ている奴に言われたかねえな。てか起こしてやったんだ。有り難く思え」
「起こすにも方法があるじゃろが!…………起こす?桜は寝ていたのか?」
「桜?お前の名前か?」
「うむ。桜は桜じゃ」
「そうか。まあいい。起きたんなら帰れ。もう十時を超えてる。親が心配するぞ」
………と、咲良が己と同じ響きを持つ名前の少女【桜】に向かって手をヒラヒラと動かしながら『帰れ』と言うと、その桜は顎に手を当てて何かを考えているかのような仕草をする。
見た目はまだ幼いが、将来的にも美人になるであろう顔立ちの良い少女。
そんな少女が何故こんな時間に、しかも血のベッタリ着いた着物姿で御神木に寄り添うようにして眠っていたのか………。
考えればキリがない。
故に咲良は面倒事に巻き込まれる前にとその場を去ろうとする。
しかし………
「………離せ小娘」
「桜じゃ!」
「どうでもいいから離せ」
桜と名乗る少女が起き上がり、咲良の服の裾を掴んで行かせまいとしているのだ。
「お主………名を何という?」
「は?………咲良だ」
「『さくら』?ぷふっ……おなごみたいな名じゃ__痛い!痛い痛い!手を、手を離せ!」
ギリリと桜の顔に食い込む咲良の指。
所謂アイアンクローと言う技だ。
「………で、何だ?」
「はふぅ、死ぬかと思ったぞ………で、サクラとやらよ。此処は何処じゃ?桜はこんな所は知らんぞ」
「………………は?」
「じゃから、桜の家まで桜を案内せい」
「………………はああぁぁぁ!?」
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