咲良、出会う

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「………………は?」 あまりに突然の、脈絡もない言葉に咲良は思わず声が裏返る。 腕の中の少女は……聞き間違いでなければ『なんで生きている?』と口ずさんだ。 自殺志願者だろうか? それで自殺に失敗し、気が動転していた………いや、ない。 それならば着物に付いた血の説明はつくかもしれないが、見る限りでは少女の身体に傷はない。 少なくとも着物に付いた大量の血を流すような怪我はしていない。 全く意味がわからない。 しかし、少女はさらに続ける。 「桜は………母上に殺されたのじゃ……首を切られて………兄上もそうして果てた………じゃないと野盗が……何故じゃ……何故に生きておる……っ!?」 少女はもう完全に気が動転していた。 目を見開き、涙を流しながら己の長い髪をクシャクシャにしながら頭を掻きむしる。 本当なら頭がイカれていると一蹴して終わりだろう。 しかし、少女は……桜は『首を切られて』と言った。 それならば着物に付いた大量の血も説明が着く。 服装も言葉遣い、話の内容から考えうるのは桜が昔の時代から____ (は、馬鹿馬鹿しい。タイムスリップ?いや、この場合はタイムトラベルか?………ってどっちにしたって有り得ねえ。SFかっての) しかし、その考えはすぐに却下される。 仮にタイムトラベルが発生したのだとして、桜がいくつもの時代を越えてこの平成の世にやってきたのだとしても、桜の話と合わせて考えるとまた疑問が沸き起こる。 桜は首を切られて死んだ。 それが証拠と言わんばかりの着物に付いたおぞましい血液。 まず即死だったろう。 タイムトラベルはその名の通り【時間旅行】。 傷を癒し、死者を甦らせる特典付きだとは思えない。 (ま、どうでもいいか) やがて咲良は思考を止め、腕の中でまだ泣きじゃくる少女の頭をポンポンと撫でる。 「事情はわからんし、わかろうとは思わんが、俺がお前を怪我させたのは事実だ。それにずっとこんな場所にいるのもあれだし、このままだとお前が風邪を退く。だから取り敢えずはうちに来い」 「………はへ?」
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