桜、散る

2/3
前へ
/73ページ
次へ
永禄三年、桶狭間の戦い。 それは尾張の国、桶狭間にて小数の軍を率いた織田信長が己の何倍もの兵力を誇る今川軍を打ち倒した日本の歴史上関ヶ原の戦いに次ぐ最も有名な戦いと言っても過言ではない奇襲戦。 その桶狭間での勝利により織田家はその名を日本中に轟かせた。 しかし、戦は戦。 勝って喜ぶ者もいれば負けて悲しむ者、命を落とす者もいる。 そして、命を落とす者は戦に参加する兵達だけではない。 戦は命を略奪する。 戦が終わっても略奪は終わらない。 残党狩り等、今川軍についたが為に命を狙われる兵はどうなる? 国に帰れればまだいいだろう。 しかし、帰る国がない者はどうなる? 苛烈な残党狩りから逃げ延び、山賊のような生活。 生きる為に弱者から略奪を繰り返すならず者へと転身する。 そうしてある日、桶狭間の戦が終わってから一月が経とうと言う頃………一つの村が山賊に襲われた。 人口凡そ三十人程の山間の小さな集落。 されども米は実りよく、村はどちらかと言えば豊かだった。 故に狙われた。 まだ太陽も沈みかけぬ時間帯、武器を手にした十人前後のならず者達。 彼らは戦う術を知らぬ男を殺し、女を犯した。 そして最後に向かったのはその村を統べる【春岡家】。 旧今川に属していた春岡家はこの辺りでは一番の富豪。 狙われないはずがなかった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加