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「じゃあ用意するわね。今日は何がいい?」
「んー……そうだな……」
「え?私?そんな………もう、仕方ないわね」
「言ってないぞ。てかエプロンを外すな。着けろ」
「もう、わがままねぇ」
中々に疲れそうなやり取りだが、咲良と美月にとってはこれが日常。
咲良の仕事終わり、一人暮らしで不摂生をしがちな咲良の為に美月が料理を作る。
二人は別に恋人同士だとか、そういったものではない。
プライベートでの付き合いも多少はあるものの、特に親密というわけでもない。
ただ、互いを良く理解しあう仕事でのパートナーと言う所だろう。
そうして咲良のリクエストにより美月は厨房へと引っ込み、店のメニューにはないオムライスを作っている。
中々に問題発言の多い店長だが、その実態はよく気のきく優しい女性。
故に咲良も態度は悪いが、頭が上がらないでいた。
「はーい咲良くーん。出来たわよー」
「…………。」
「あぁっ!無言でハートマークを壊さないで!何かしらのコメントを!」
咲良の前に出されたのは、よく専門店なんかでも出されるトロトロふわふわの半熟たまごが印象的なオムライス。
たまごに掛けられたケチャップはハートマークを描いている……が、咲良はそれをスプーンで一気に伸ばし、掻き回して亡き物にする。
そして………
「……ごちそうさん。うまかったよ。ありがとう」
「どういたしまして。てかまだデザートがあるけどどうする?」
「だからエプロンを外すな。服を脱ごうとするな。まだ店は閉めてないんだから客が来たらどうするつもりだ」
「もちろん追い出すわ」
「客商売を何だと思っている」
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