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夢だって知っていたら一生目覚めなかったのに……
――違う
夢だって知っていたから目が覚めたんだ……
「……幽也」
手のひらでギュッと強く握られていた漆黒のチョーカー
愛おしい人の血を吸い込んで、赤黒く変色した部分が目立つ
スッ……っと、壊れ物を扱うように指でなぞると、乾いた血痕のざらついた感触
初めて俺は認識した……
『幽也は死んだんだ』
「……っ、く……ぅ……あぁ、っ//」
祈るようにチョーカーを胸の前で押し当てて……
「ゆ、うや……っ、
ゆぅ……やぁ……っうぁ……ああぁ
ヤダよ……約束したよっ
……っ、うぅ……俺たち、一生互いを想い続けるって
幽也の、大好きな鶏の唐揚げ……今度、っ……作ってあげるんだって
付き合ってからの、初めての誕生日は……2人で一緒に祝うんだ、って
今度、一緒に……星を……っ、見に行くんだ…って
俺を迎えに来て、抱きしめて、キスするんだって……
ずっと、ずっと……一緒だって」
やく、そく……したよ
なのに、どうして……なんで……
幽也が死なないとダメだったんだ?
なんで俺は生きているんだ?
「もぅ……分からないよ」
ポタポタと、透明な滴が乾いた血痕に何度も何度も潤いを与えたが……
二度と、鮮血の赤色が戻ってくることは無かった
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