俺にとっての

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声が枯れて、目が腫れても…… 俺は止まらない涙を流しつづけた 体中の水分が無くなりそうな程に、溢れ落ちた感情は…… 行く宛も無く、音も立てずにシーツに染み込んでいく 『これから』や『続き』なんて考えられない 俺は幽也が全てなんだ 前進も後退も出来ない現状で、只……時間だけが無情にも経っていく 『時間が経てば大丈夫』? 『時が次第に癒してくれる』? なんて無責任な言葉だと思った 幽也は一生戻ってこないのに…… 幽也で溢れた脳内で、導き出した答えは一つ 「待ってて、幽也……俺も、すぐにそっちへ逝くから」 フラフラとした足取りで、向かう場所は決まっている ――俺と幽也が初めて出会った場所 襲われそうになった俺を助けてくれて…… 見返りに付き合えなんて言われた あの時は、まさか本当に付き合うことになるなんて微塵も思っていなくって…… しつこい人だ…… 早く諦めて欲しい そんな感情が渦巻いていた だけど、君の温もりに触れるうち 気づけば、君の存在が俺の居場所になっていた 君のことを思い出せば、思い出す程に…… 君のことを想えば、想う程に…… ――もっと、幽也に『好きだ』と伝えればよかった いつも抱き着いて、好きだ好きだとうるさい幽也が照れくさく 突き放して傷つけたことはあっても…… 自分は幽也のために何かをしたことはあっただろうか? ――もっと早く、もっと素直に…… 『幽也のことを愛せば良かった』 後悔して、後悔して…… どれだけ悔やんだとしても、君はもう返ってこない 俺はもう、幽也を愛する術を持っていない 幽也に貰った愛情を、十分の一も君に返すことが出来ないんだ それなら、いっそのこと…… ――俺も、君を想って……後を追いかけるよ
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