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「というよりは、かなりショッキングな事件だそうなので、最もショッキングな存在である七荻警視を選んだのだと思われます」
「羽鳥、お前ケンカ売ってますの?」
「いえ、決してそんな事は」
「…………」
「…………」
一瞬の沈黙の後、羽鳥が口を開く。
「まあ、恐らく現場に特務探偵が二人もいるからでしょう。
最近、警察より特務探偵の方が期待されてしまってますからね」
「だから警視庁で最も優秀な私を行かせる事で、特務探偵より早く事件を解決して警察の威厳を取り戻そう、ということですのね」
ななかが得意げに言う。
「10歳の子供行かせてる時点で威厳もへったくれも無いと思いますが、恐らくそうでしょうね」
羽鳥が淡々と言葉を紡ぐ。
「10歳だからって馬鹿にするなですの!私はアメリカでしっかり大学卒業してますの。特務探偵なんかに負けませんのよ」
ななかが胸を張って言う。
「そうですね。七荻警視はアレですもんね。見た目は子供、頭脳は…」
「それ以上言うなですの!」
ななかの声が部屋に響き渡った。
七荻ななか警視と、羽鳥模架(はとりもか)警部補。
この二人は警視庁きっての名コンビである。
警視総監の孫であり、アメリカの大学で専門的な知識を身に着け、10歳にして警視の座に君臨する天才少女七荻ななかを、あらゆる格闘技に精通し射撃の腕も超一流の羽鳥がサポートする。
この二人で、今までいくつもの難事件を解決してきたのだ。
「まあ、そういう事なら仕方ありませんの。準備するから、とっとと出て行くですの。覗いたら承知しませんのよ?」
ななかが羽鳥をにらみ付けて言う。
「七荻警視の着替えなんて覗いたところで、私には何のメリットもありません。もっと身の程を知って下さい」
「……お前、私にケンカ売ってますの?」
「いえ、決してそんな事は」
「…………」
フリルで飾り付けられた部屋に、また沈黙が流れた。
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