31人が本棚に入れています
本棚に追加
「全く、なんと酷いことを……」
「ああ、絶対許せねえ」
雨宮と赤原が高津の遺体を前に呟く。
「花子君は?」
「あまりのショックに錯乱気味だったからな。控室で東吾さん達についてもらってるよ」
雨宮が悲痛な面持ちで答える。
「そうか、美しきアフロディーテは命を失い、聡明なアテナは涙に暮れる……。この罪人はあまりに罪深い……」
「…………」
雨宮の脳裏に、幸せそうに高津の事を話していた花子の姿がよぎる。
あの笑顔が、今は悲しみの涙に濡れることになってしまった。
「絶対、許せねえよ。絶対に」
雨宮が怒りに震えた声でもう一度呟いた。
「それにしても、驚いた。まさか雨宮君が特務探偵で、花子君が助手だったとはね…」
「こっちも驚いたよ。まさかあんたが特務探偵だったとはな」
二人はお互いに顔を見合わせて言う。
「ともかく、今回の犯人は我々二人を同時に相手にすることになったというわけだ。警察も、七荻警視という敏腕の刑事を派遣してくれると言っていた。しっかり力を合わせればすぐに真実は暴かれるだろう」
赤原の言葉に、雨宮が顔色を変える。
「な、七荻……?
今七荻警視って言ったか?」
「ん?ああ、灰野がそう言っていたが、何か問題でもあるのかい?」
雨宮があからさまに顔をしかめる。
「あ、ああ。確かに優秀なんだが、人格的に問題があるというか、設定に無理があるというか……」
言葉を濁す雨宮。
「……なるほど、まあ覚悟はしておくよ」
赤原が、雨宮を見据えて言った。
最初のコメントを投稿しよう!