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「それよりも今回の捜査だが、さっき打ち合わせた通りで…」
僅かに言い淀む雨宮に、赤原は静かにうなずく。
「ああ、その方がいいだろう。最も安全で、最も効果的なやり方だと思うよ」
赤原は頷きながら言った。
「問題は、花子が納得してくれるかどうかだが……」
雨宮が考え込むような仕草をする。
「花子君は聡明な女性だ。きっと分かってくれると思うよ」
赤原が微かに微笑みながら言う。
「だといいんだけどな。あいつも色々な修羅場をくぐってきたとはいえ、実際はまだ子供だからな……」
雨宮はしばらく考え込むが、途中で諦めたように顔を上げ、言葉を続けた。
「ま、そこは俺が上手くやるしかないな。じゃあ赤原、悪いけど俺は花子の所に行ってくるよ」
雨宮の言葉に、赤原が微かに微笑む。
「それがいい。警察の方が来たら、ウルドの控室までお連れしよう」
雨宮は、赤原に礼を言うと静かに手を振った。
(すまねえ、花子。もう、お前に悲しい想いはさせないって約束したのにな……!)
雨宮が、ギリッと唇を噛む。
鮮血が一筋滴り落ちる。
(今回も…絶対犯人を捕まえてやる。そう、あの事件と……)
ポケットの中の拳に力が入る。
(お前の母親が殺されたあの事件と同じように、俺がこの手で……!)
静かな怒りを胸に秘めたまま、雨宮は控室へて歩いて行った。
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