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「…ふう、やれやれ。私も助手の扱い方を少し考えなければならないな」
赤原が大きくため息をつき、高津の遺体に目を向ける。
「高津君、美しい君がこのような姿になってしまうとは……。願わくば死して尚、美しくあるように……」
そう言うと赤原は、懐から一本の薔薇を取り出し高津の傍らに置く。
「……赤原。現場保存はどうした」
横からすかさず灰野が声を掛ける。
「全く、どうせ見てるのなら素直に協力してくれれば嬉しいんだがね」
赤原がため息をつきながら言う。
「……見てなどいない。たまたま戻ってきただけだ。じゃあ俺は行くぞ。しっかり現場保存するんだぞ」
そう言うと、灰野がまた闇に消える。
「……やれやれ、本当に困った助手だ」
赤原が苦笑いをしながら大きくため息をつく。
全てを包む夜の闇が、もの言わぬ魂を覆い隠す。
見失ってしまわぬように、
消えてしまわぬように、
赤原はただそこで一人、命を失った魂の抜け殻を見つめていた……。
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