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花子は、息をついた。
部屋の灯は点いたままだった。
ベッドに寝そべり、ただ漫然と白い天井を眺める。
また息をついた。
僅かに白く染まった息を見て、暖房をつけていなかった事に気付く。
だが、立ち上がる気にはなれなかった。
花子があの後、この部屋で行った事といえば、汚れてしまった衣服を着替えた事だけだった。
それですら、身に着けていたロンTとジーンズを脱ぎ捨て、代わりにカバンから適当に取り出したミリタリー調のカーゴパンツと、何の変哲もない白のワイシャツを身に着けただけの、ただただ惰性に満ちた行動に過ぎなかった。
花子は、探偵助手であると同時に、モデルでありデザイナーであると自覚している。
そのため、様々なスタイルのファッションを着こなす事に挑戦し、それら全てを普段のコーディネートに取り入れる事ができるまでに昇華していた。
その背景には、常に自分のファッション感覚を研ぎ澄まし、流行を見失わないようにと努力する、花子の普段からの研鑽があった。
探偵として努力する傍らで、モデル、デザイナーとしても努力していた花子。
やるからには、きちんとやる。
当たり前のように使い古された言葉であったが、それが花子の幼い頃からの行動理念全てであり、今の花子を形成する最も大きな要素の一つであった。
だが、今の花子からはその理念ですら、消え失せてしまっていた。
高津が亡くなった時でさえ、ルーズではありながらも不自然なコーディネートだけはしていなかった。
だが、今はあまりにバランスが悪く不自然な服装を、ただ漫然と身に着ける。
シャツのボタンを留める事すらせずに、そのままベッドに倒れ込む。
ボタンの留められていないワイシャツの隙間からは、美しい白い肌と薄桃色の下着が覗いていた。
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