物語 - 3章 - の続き

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 *  あたしの部屋をノックした美穂子さんが、夜は3人で向日葵に食べに来てねと告げ、店の開店準備に向かった。  ネットで天気を確認すると、明日一杯まで雨の心配はないようだ。  あたしは黙って家を出た。  近くのアパートの駐輪場には、無事なスクーターの姿があった。  スタンドも立てずに壁に立てかけてあったけれど。  本厚木の駅前を通り、海老名に渡る橋の手前で川沿いの道を右折した。  そのまま川の流れに沿って南へ向かい、厚木市の外れにある榊組の事務所に着いた。  阿久沢組のようなビルとは違い、ちょっと要塞みたいな形をした鉄筋コンクリートの3階建てだ。  3階には組長の住居があるのだけれど、組長は塀の中なので、今はその奥さんだけが住んでいる。  2階には組長室、応接室、組員たちの待機所、泊まりこみで当番をする組員の風呂などもある。  1階はガレージと倉庫で、その下にはヒロちゃんと遠藤さんが青春時代に乗り込んだというあの地下室がある。  ガレージでシゲルが車を磨いていた。  「あ、芽衣さん、原チャリ乗るんだ?」  「うん。遠藤さんいますか?」  「組長室にいるけど。ちょっと待って」  そう言うとシゲルは壁の電話を取り、内線であたしの訪問を伝えた。
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