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「あの唄、皆んなすっかり気に入っちまってな」
「良い唄ですよね本当に」
「政は、唄に出てくる“愛の庭”ってのをこの組と重ねてたのかも知れないな。“名もない花”ってのを社会不適合者の自分たちに置き換えてよ」
「あたしもそう思います」
「正直だなおい」
苦笑する遠藤さんを見て、慌てて否定した。
「いや、あの。前半の方がです」
ノックが有り、組員がホットコーヒーを2つ置いていった。
冷房が効いているので丁度良さそうだ。
お互いに口を付け、カップを置くと遠藤さんが言った。
「で、どうした。何があった?」
「大切な話です。少し時間がかかります。大丈夫ですか?」
遠藤さんは頷くと内線電話を取り、電話も来客も通すなと組員に命じた。
あたしはソファーの背もたれから体を起こし、深呼吸をした。
「あたし政やんを殺した犯人を知っています」
遠藤さんが息を飲み、少し間を置いて言った。
「誰だ? 何で芽衣が知ってる」
「2人組の男です。他にもいるかも知れませんけど2人組は確定です。今日辿りつきました。でも首謀者は別の人間です」
「答えになってないぞ。何でお前が知ってるんだ」
さっきまでの優しい表情を消した遠藤さんが、低く強い口調で言った。
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