物語 - 3章 - の続き

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 *  息苦しい。  四つん這いになり、呼吸が整うのを待った。  どこをどうして帰り着いたのか。  体のどこにも痛みはなく、一応五体満足のようなので事故は起こしてない、と思う。  スクーターはあのアパートの駐輪場に停めたのか。  後で確認しなければならない。  昼を知らせる鐘の音が聞こえてきた。  何とか立ち上がりって風呂場に入り、真水のシャワーを頭からかぶった。  10分くらいそのままでいただろうか。  それでも、煮えたぎった体中の血を冷ますには至らなかった。  鏡に映った自分の顔が、まるで般若のようだ。  苦労して表面上の冷静を装い、リビングに入った。  「丁度呼ぼうと思ったの。芽衣の好きなカルボナーラよ」  食欲などまるで沸かないけれど、生きる為には必要な作業なのだと自分に言い聞かせた。  ヒロちゃんと純也が会話をしているけれど、全く耳に入ってこない。  口に詰め込み、飲み物で流し込むという作業を無心で繰り返した。  美穂子さんがこっちを見て、心配したようすで何か言っている。  「ごちそうさま」  それだけ言って部屋に戻った。  政やんを失ったことで傷つき塞ぎ込んでいるように見えただろう。  真逆の、怒りに震えるさまを隠すには仕方なかった。
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