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「なんだ……何をした貴様っ!!」
見たことも無い魔法に出会い、ブラールが焦燥の表情を浮かべる。
そんなブラールに、アルは静かに言い放った。
「お前に答える義理はねえよ。さあ、勝負の続きだ」
自然と、アルの表情に笑みが零れる。
この現象に不明な点は多々あるとは言え、今の自分の中には凄まじいほどの魔力が溢れていることが、アルには分かった。
身体の痺れもいつの間にか消え去っている。
――勝てる。
そう、アルは確信していた。
「くそっ! ならばこれなら……変成!」
不意に、ブラールが吠えた。
大樹の根に突き刺さった短剣が形を変え、細かい針の束になる。
「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる……ってね。あまりカッコいい戦い方では無いが、君を倒すには効率が良いだろう」
不敵に笑うブラール。
針はアルの四方八方を取り囲み、僅かな隙間からでも入り込んでその身を貫かんと、その鋭い切っ先を向けている。
しかし、アルの表情から笑みは消えない。
この絶体絶命の状況下で、余裕の表情を浮かべている。
「何をしても無駄だよ、ブラール。お前がリースにつけたその傷。百倍にして、お前の身体に刻み込んでやる」
「ほざくなッ! 落ちこぼれがあああッ!!」
ブラールが片手を上げて、檄を飛ばす。
怒り、焦り、恐怖、プライド。
様々な感情を乗せた血の雨が、一斉にアルに降り注いだ。
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