エクリプス・ドレイン

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  迫り来る針の束を前に、アルは少しも焦りを感じていなかった。 勢い良く右手を上げ、口を開く。 シェリスを呼び出した時と同じように、頭の中に流れ込んでくる文言。 ――それを解き放つために。  母なる大地に強く根差し  何千年の時を見守りし君よ  その巨大な茶色は力の証  変わらぬ緑は活力の証  今、我の呼び掛けに応え  目の前の敵に大自然の鉄槌を 「――枝葉の旋風、ブレイド・サイクロン!!」 刹那、アルを中心に無数の葉が、とぐろをまいて立ち上った。 「な、なにぃっ!?」 無数の葉は、血液の針を次々と散らし、その場に赤い霧をつくりあげる。 力を失った血液は万有引力に従い、大地に撒き散らされ、それを赤く染めた。 「馬鹿な……! 媒体魔法がこうも簡単に……」 驚愕に肩を震わせるブラールに、アルは勝ち誇った笑みを浮かべる。 「さて、宣言通りいかせてもらうぜ!!」 「うわああああああ――ッ!!」 アルの合図で、無数の葉がブラールを襲う。 刃のような葉は、ブラールの身体に無数の傷を刻んだ。 「とどめだッ!!」 そしてその機を逃さず、アルが一気に距離を詰める。 その手には、青々とした一個の木の実。 頭ほどの大きさのそれは、熟せば甘くて美味しいフルーツだが、今は硬くてとても食えたもんじゃない。 しかしアルはそれを両手に握りしめ、ブラールの前で大きく振りかぶった。 「ちょっ……! ま、待て……」 「やーだねっ」 必死で制止するブラールに対して、アルは悪魔のような笑みを浮かべる。 そしてそのまま、持っていた実を思いっきり振り下ろした。 「スラムダ――ンクッ!!」 ガイィィン! 「ぐはぁっ!!」 頭に華麗なダンクを決められたブラールは、そのまま気を失って倒れ込む。 ――アルの勝利が決定した瞬間であった。  
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