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「か、勝った……」
倒れ込むブラールを見て、アルは感慨に満ちた声をあげる。
木の魔力を使い果たしたからか。アルの髪はもとの金色に戻っていた。
「……そうだ、リース!」
気絶するブラールを放置し、アルはリースの元へ走った。
眠りにつくリースの足から、僅かに流れる血液に、アルは悲痛な表情を浮かべる。
「……畜生。どうしてこんなひどい事が出来るんだよ……。女の身体に傷をつけるなんて……」
アルは唇を噛み締めながらハンカチを取り出し、その傷口に巻き付ける。
「う……ん……。あれ? 私……」
その時、眠っていたリースの目が開いた。
「き……きゃあああああ!! な、なにしてんのよ変態!」
「シウバッ!」
いきなり襲いかかる痛みに、アルが嫌な悲鳴をあげる。
目覚めたリースの痛烈な蹴りがアルの顔面にめり込んだのだ。
リースの瞳には、足にハンカチを巻き付けるアルが、まるで自分の足を覗き込んで撫で回しているかのように見えたらしい。
「最低! 信じらんない! バカ! バカバカバカバカ!!」
「り……あだっ! リー……ぶぐぁっ! お……落ち着……ぐぼぁっ!」
バカバカの連呼と共に繰り出される激しい蹴撃の連続に、アルの秀麗な顔はどんどん歪んでいくのだった。
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