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「ご、ごめんなさい……」
「……ああ、以後気を付けてくれ」
デコボコになったアルの顔に、リースが深々と頭を下げて謝罪する。その足には、自分で結んだハンカチがついていた。
大暴れするリースにようやく事情の説明が出来たのは、アルの顔面に二十発の蹴りが入った後だった。
蹴りを防ごうとして思わずリースの足を掴んで開脚させてしまい、図らずもピンクの下着とご対面してしまった時には、激怒したリースから詠唱を紡がれたりもした。
だが、今こうして何とかアルは生きている。
ズキズキと痛む顔面が、それを証明していた。
「でも……本当に魔法使えるようになったんだね。良かった……」
痛む顔をさするアルに、リースが小さく言った。
ずっと心配していた事が解決して、本当に安心したのだろう。
普段、アルの前では素直になれないリースも、この時ばかりは心からの笑みを浮かべていた。
「ああ。まあ、まだ色々と条件付きなんだけどな……」
「条件……?」
しかし、対するアルの浮かない表情に、リースも訝しげな表情を浮かべる。
アルは少し考え、リースに事情を説明することに決めた。
今まで、自分を一番支えてくれたリースにだからこそ、全てを知って欲しかった。
「実はな……」
そしてアルの口から、リースにとって信じられない事実が紡がれたのだった。
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